健康診断で血糖値・HbA1cが高いと言われた方へ|糖尿病の基準と治療について
【要点】
- 糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなる病気です。
- 初期にはほとんど自覚症状がなく、健康診断で初めて指摘される方も少なくありません。
- 放置すると、目・腎臓・神経などの合併症だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクも高まります。
- 糖尿病治療の目的は、単に血糖値やHbA1cを下げることではなく、将来の合併症を予防し、健康な生活を長く続けることです。
- 食事・運動などの生活習慣を具体的に見直し、必要に応じて患者さん一人ひとりに適した薬物療法を行います。
糖尿病とは?
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)が高い状態が慢性的に続く病気です。
通常、食事から摂取した糖は、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きによって細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。
しかし、
- インスリンの分泌が少なくなる
- インスリンが効きにくくなる
といった状態になると、血液中にブドウ糖が増え、血糖値が上昇します。
日本人に多い2型糖尿病では遺伝的な体質に加え、食生活・運動不足・肥満・加齢など、さまざまな要因が関係しています。
「甘いものを食べたから糖尿病になった」というような単純な病気ではありません。
糖尿病の診断基準
健康診断で、
「血糖値が高い」
「HbA1cが高い」
と言われても、それだけで糖尿病と確定するとは限りません。
糖尿病の診断では、主に、
- 空腹時血糖値 126mg/dL以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値 200mg/dL以上
- 随時血糖値 200mg/dL以上
- HbA1c 6.5%以上
などが「糖尿病型」の基準となります。
血糖値とHbA1cの組み合わせや、別の日の再検査などによって糖尿病と診断します。
一方、
「糖尿病ではないけれど、正常ともいえない」
という段階の方もいます。
いわゆる「糖尿病予備群」では、将来糖尿病を発症するリスクが高くなるだけでなく、すでに動脈硬化のリスクが高まっている場合もあります。
健康診断で異常を指摘された段階で、一度確認しておくことが大切です。
HbA1cって何?
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、採血前の1~2か月程度の平均的な血糖状態を反映する指標です。
血糖値は食事や運動などによって一日の中でも大きく変動しますが、HbA1cを確認することで、ある程度長い期間の血糖状態を把握できます。
ただし、HbA1cだけを見ればよいわけではありません。
貧血などの影響によって実際の血糖状態とHbA1cが一致しないこともあるため、血糖値や患者さんの状態と合わせて評価します。
糖尿病は「症状が出てから」では遅い
糖尿病の初期には、ほとんど自覚症状がありません。
血糖値がかなり高くなると、
- のどが異常に渇く
- 水をたくさん飲む
- 尿の回数や量が増える
- 体重が減る
- 疲れやすい
などの症状が現れることがあります。
しかし、「症状がないから大丈夫」とは限りません。
症状がない間にも、高血糖によって少しずつ血管が傷ついている可能性があります。
糖尿病は、症状が出てから治療を始めるのではなく、症状がない段階から適切に管理し、将来の合併症を予防することが重要な病気です。
糖尿病を放置するとどうなる?
高血糖が長期間続くと、全身の血管が障害されます。
代表的な合併症として、
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
があります。
いわゆる糖尿病の「三大合併症」です。
さらに糖尿病では動脈硬化も進行しやすく、
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 末梢動脈疾患
などのリスクも高まります。
つまり糖尿病は単に「血糖値が高くなる病気」ではなく、全身の血管や臓器を守るために治療する病気と考えることが大切です。
HbA1cはどこまで下げればいいの?
糖尿病治療では、HbA1c 7.0%未満が合併症予防のための一般的な目標の一つとされています。
一方で、すべての患者さんが同じ目標ではありません。
年齢・糖尿病の罹病期間・使用している薬・低血糖のリスク・認知機能・日常生活動作・合併症などによって、目標値を調整します。
若く、低血糖を起こさず安全に治療できる方では、より厳格な血糖管理を目指すことがあります。
反対に、高齢の方や低血糖のリスクが高い方では、無理に血糖値を下げすぎることが危険な場合もあります。
「HbA1cはいくつなら正解」という一律の答えではなく、その方にとって安全で適切な目標を設定することが重要です。
糖尿病の治療
食事療法
糖尿病治療の基本の一つです。
ただし、単に「甘いものを禁止する」という治療ではありません。
- 食事量
- 炭水化物、脂質、たんぱく質のバランス
- 間食
- 飲酒
- 食事をとる時間
など、普段の生活全体を確認することが大切です。
当院では、「食事に気をつけてください」で終わるのではなく、患者さんの実際の食生活を伺いながら、無理なく続けられる改善方法を一緒に考えます。
運動療法
ウォーキングなどの有酸素運動に加え、筋力トレーニングも血糖コントロールの改善に役立ちます。
大切なのは一時的に頑張ることではなく、継続することです。
年齢や体力・持病・関節の痛みなども考慮しながら、その方が続けられる運動を考えます。
糖尿病の薬はどうやって選ぶの?
現在、糖尿病にはさまざまな治療薬があります。
- メトホルミン
- DPP-4阻害薬
- SGLT2阻害薬
- GLP-1受容体作動薬
- GIP/GLP-1受容体作動薬
- インスリン
など、それぞれ作用や特徴が異なります。
以前の糖尿病治療では「血糖値を下げること」が薬剤選択の中心でした。
現在はそれだけではありません。
例えば、
- 肥満がある
- 心不全がある
- 慢性腎臓病がある
- 動脈硬化性疾患のリスクが高い
- 低血糖をできるだけ避けたい
など、患者さんの状態によって適した薬が異なります。
血糖値だけを見るのではなく、体重・心臓・腎臓なども含めて治療薬を選ぶことが、現在の糖尿病診療では重要になっています。
薬を処方して終わりではありません
糖尿病は長く付き合っていく病気だからこそ、定期的なフォローが重要です。
当院ではHbA1cや血糖値だけでなく、
- 体重
- 血圧
- コレステロール
- 腎機能
- 尿蛋白・尿アルブミン
なども確認しながら治療を行います。
また、必要に応じて眼科受診をご案内するなど、糖尿病の合併症を早期に発見することも大切にしています。
薬を処方してHbA1cだけを確認するのではなく、将来の合併症を防ぐために全身を管理することが糖尿病治療では重要です。
Q&A
Q. 糖尿病は完治しますか?
A. 2型糖尿病は一般的には継続的な管理が必要な病気です。
一方、体重減少や生活習慣の大きな改善によって、薬を使用せずに良好な血糖状態を維持できる「寛解」と呼ばれる状態になる方もいます。
ただし、再び血糖値が上昇する可能性もあるため、寛解後も定期的な検査は必要です。
Q. 健康診断でHbA1cが少し高いだけでも受診した方がいいですか?
A. 一度確認することをおすすめします。
糖尿病なのか、糖尿病になる前の段階なのかを確認し、必要に応じて早い段階から生活習慣を見直すことが大切です。
Q. 甘いものを食べると糖尿病になりますか?
A. 甘いものだけが糖尿病の原因ではありません。
遺伝的な体質・食生活・運動不足・肥満・加齢など、さまざまな要因が関係しています。
Q. 糖尿病になると必ずインスリン注射が必要ですか?
A. いいえ。
2型糖尿病の多くは、食事・運動療法や内服薬、GLP-1受容体作動薬などを組み合わせて治療します。
ただし、血糖値が非常に高い場合やインスリン分泌が低下している場合などには、インスリン治療が必要になることがあります。
Q. 一度薬を飲み始めると一生飲まないといけませんか?
A. 必ずしもそうではありません。
体重減少や生活習慣の改善によって、薬を減らしたり中止できたりする場合もあります。
一方で、糖尿病は時間とともにインスリンを分泌する力が低下することもあるため、治療が必要になる場合もあります。
大切なのは「薬を飲んでいるかどうか」ではなく、血糖値を適切に管理し、将来の合併症を防ぐことです。
最後に
糖尿病治療の目的は、単にHbA1cを下げることではありません。
目や腎臓、神経を守り、心筋梗塞や脳梗塞などを予防し、将来も健康な生活を続けることが本当の目的です。
また、同じHbA1cでも、年齢や体重・生活習慣・心臓や腎臓の状態によって適した治療は異なります。
当院では、患者さんの生活スタイルを伺いながら食事や運動について具体的にアドバイスし、必要に応じて一人ひとりの状態に合った薬物療法をご提案します。
治療開始後も定期的に検査を行い、血糖値だけでなく、血圧・脂質・腎機能なども含めて継続的に確認します。
「健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた」
「糖尿病かどうか一度調べてほしい」
「今の治療が自分に合っているか相談したい」
という方も、お気軽にご相談ください。